歌いたいのに声が出ない。トラウマと戦う元アイドル嘉陽愛子の過去に迫る
部活で優勝したとき。
大きな仕事を成功させたとき。
誰にでも、忘れられない光景ってありますよね。
17歳で大手レコード会社から華々しいアイドルデビューを果たして、人生の半分以上を芸能界で過ごしている嘉陽愛子さん。
「上から降ってくるような拍手が忘れられなくて…」
今もなお「あいぴー」というニックネームで愛され続けている彼女が忘れられない景色は、武道館のステージ。
漫画のようなデビュー秘話とは裏腹な、アイドル時代の苦難やトラウマとの戦い。 嘉陽愛子の人生に迫ります!
某アイドルグループ最終オーディションに落選。それが奇跡の始まりだった
pinoライバー:嘉陽愛子
神奈川県出身。
誕生日は12月11日、A型。
アイドル活動を経て、現在はフリーランスの役者・広告モデルとして活動中。
ーーあいぴーさん、avex所属だったんですね! 芸能界に入りたいという気持ちはいつから?
あいぴー:小さい頃から歌番組を見てライブごっこをしたり、「歌手」というものに憧れがありました。でも前に出るタイプではなかったので、その気持ちは内に秘めていて。
国語の授業の音読で、声が震えるくらい緊張しいだったんですよ(笑)
ーーそんなに! そんな少女が芸能界を目指すようになったきっかけは?
あいぴー:中学校で出会った友達が芸能活動をしていたので、何気なく「私も芸能界に興味あるんだよね」と自分の夢を打ち明けたら、オーディション雑誌からデビューできる道があることを教えてくれたんです。
初めて受けたオーディションで最終選考まで残ったとき、漠然と夢見ていた芸能界が突然リアルに感じました。その感覚がすごく楽しくて「もう一度受けたい!デビューしたい!」と思うようになりました。
ーー初めてのオーディションで、最終選考まで…。すごいです! 某アイドルグループのオーディションでも、最終選考まで進んだと聞きました。
あいぴー:2つ目に受けたのがアイドルグループのオーディションでした。テレビ番組内のオーディションだったので躊躇していたんですが、友達に背中を押されて消印有効ギリギリに応募。
最終選考で落ちちゃったんですけど、オーディション番組をたまたま見ていた音楽関係者の方が、声をかけてくださったんです!
ーーここでまたまた、奇跡の出会い!
あいぴー:「1回会ってみたい!」と言っていただき向かったら、avexの某ユニットのメンバー追加オーディションだったんです。その流れでavexアカデミーに練習生として所属しました。
ーー漫画のような展開!それがavexさんとの出会いだったんですね! レッスンと学校の両立はどうでしたか?
あいぴー:ずっと憧れていた浜崎あゆみさんと同じレコードレーベルということも嬉しかったですし、初めてのことばかりで刺激的で、キラキラした毎日がとにかく楽しかったです!
学校帰りにレッスンに行って、ときには終電時間まで練習に明け暮れる…という過酷な日々でしたが、全く辛くなかったですね。
ーー聞いているだけで大変そうです…。 その後17歳でデビューしましたが、そのときの心境は?
あいぴー:デビュー後はレコーディングやMV撮影、リリースイベントなど、年間スケジュールが決まっていたので、ただただ目の前の仕事をこなしていく日々。全てが新鮮で楽しくて、エンタメの楽しさをより好きになれた時間でした。
それと同時に、プロの世界に入ったことで自分の実力のなさも実感。常に「失敗したら怖い… 」というプレッシャーと戦っていましたね。
ーーなるほど。まだ17歳ですもんね…。
あいぴー:突然大人の世界に飛び込んだので、漠然と不安は感じていましたね。
生活が変わっていく中で、ネットでの誹謗中傷や学校での嫌がらせもありました。それでも変わらずに接してくれた友人や先生、仲の良かった保健室の先生の支えのおかげで、高校生活はとても楽しかったです!
「20歳過ぎてアイドルってどうなの?」年齢と葛藤の日々
ーー大手レコード会社で、念願のデビューを果たしたわけですが… 憧れのアイドル人生を謳歌!ってことでもなかった?
あいぴー:そうですね。20歳を過ぎて、周りの友達が就職や進学する中で「この歳でアイドルってどうなんだろ?」と疑問に思い始めてしまって…。
そもそもアイドルというより歌手になりたかったので、「アイドルとしてあるべき姿」という固定観念が自分を苦しめていたんだと思います。
ーーなるほど。確かにアイドルって他の職業に比べて制限が多いですよね。 その後avexを退所されましたが、大手レコード会社を辞めるという不安は?
あいぴー:憧れのアーティストさんがいる大手レコード会社ですし、不安はありました。それでも、アイドルとしてのレッテルを剥がしたいという気持ちが大きかったです。
それに真摯に向き合えていない自分のままアイドル活動を続けることは、ファンに対して失礼だと思っていたので、この選択に後悔したことはないです。
ーーそれほど苦しんでいたんですね。 その後、舞台にチャレンジしていますが、アイドル以外のお仕事はどうでしたか?
あいぴー:アイドル時代のドラマや声優のお仕事とは違い、1ヶ月かけて作り上げる舞台が新鮮で楽しかったです。
でも、心のどこかにずっと「歌手に戻りたい」という気持ちがあって。どうしても忘れられない景色があったんです。
ーーその景色とは…?
あいぴー:アイドル時代に、一度だけ武道館のステージに立ったことがあるんです。そのときの上からウワーッと降ってくるような拍手が忘れられなくて。
緊張で自分のパフォーマンスの記憶はないのに、その感覚だけはどうしても忘れられないんです。「もう一度あの景色を見たい!」という思いで、芸能活動を続けてきました。
歌いたいのに声が出ない…今も続くトラウマとの戦い
ーーもう一度、武道館のステージに立つために、舞台に出演しながら歌手活動も並行する、という選択肢はなかった?
あいぴー:実は、アイドル時代に苦しんだトラウマから声が出なくなってしまって、今も立ち直りの最中。
歌詞を書いたり、ギターを始めたり、ボイトレに通ったり…色々試しましたが歌いたいのに声が出ない、歌うことが怖いんです。
ーー歌が大好きなあいぴーさんにとっては辛いですね…。 どんなトラウマですか?
あいぴー:デビューして色々なアーティストを間近で見ることで、自分の実力を思い知りました。
浜崎あゆみさんのような楽曲に憧れていたのですが「愛子ちゃんの歌はバックミュージックに負けるから合わないよ」と言われたことがあって。
その言葉に納得できたからこそ、ショックも大きかったです。
ーー苦しい時期が続いても、芸能活動を辞めようと思わなかった?
あいぴー:辛いときは「ここで辞めたら後悔するよね?」と自問自答し続けました。悩み始めると「この世界に入らなければ良かった」と思ってしまう性格。
そう思いながら中途半端に続けるのは嫌なので、ずっと全力で歩き続けています。
あとは父譲りの頑固な性格かな?
小さい頃から一度決めたことは曲げられなくて、こだわりが強い。親の言うことに納得できなくて、3歳で初めて家出をしたくらいです(笑)
ーー3歳で家出ですか!?それはかなりの頑固かもしれません(笑) アイドル時代に感じた自分への固定概念の悩みは、今もありますか?
あいぴー:ボイストレーニングの先生に「体も楽器なんだよ!」と言われて楽になれました。
アイドルだろうと、アーティストだろうと歌い手であることに変わりはない。自分がどうありたいか、結局は自分の表現次第だな…と思えたんです。
ただ楽しく歌っていた私はもういないけど、これからも歌と逃げずに向き合い続けて、トラウマを乗り越えた自分に会いたいです。
今でもトラウマと戦い続けている、あいぴーさん。
小さい頃から歌うことが大好きだった彼女にとって「歌いたいのに、歌えない」というもどかしさは、並大抵なものではないはず。
後編では、もがきながらも活動し続ける彼女が描く未来や、新しい夢について語ってもらいました!